機械学習・ディープラーニング・AIの違いとは
機械学習・ディープラーニング・AIは、それぞれが独立したものではありません。AIという広い領域に機械学習が含まれ、機械学習にディープラーニングが含まれます。では、3者の関係性を詳しく見ていきましょう。
- ■AI(人工知能)
- 人間の知能をコンピュータとして再現する技術やその概念の総称
- ■機械学習
- AIの一部で、データを与えて機械に学習させる技術
- ■ディープラーニング(深層学習)
- 機械学習の一種で、ニューラルネットワークという学習方法を用いる。
AI(人工知能)とは
AIは人間の知能をコンピュータとして再現する技術や概念、あるいは人間の知能を模したコンピュータのシステム自体を指す言葉で、人工知能とも呼ばれています。しかし、明確な定義はなく、広義の使われ方をしています。
AIは常に進化を続け、従来であれば、人間でしか担えなかった業務の一部を代行できるようになりました。顔認証システムや予測変換、会議の議事録文字起こしなど、活用が急速に広がり、社会への定着が進んでいます。
機械学習とディープラーニングの違い
機械学習とは、データを与えて機械に学習させる技術です。データの間にある法則性をコンピュータに把握させることで、分析や予測を実現します。ECサイトで買い物をする際のレコメンドシステムもその一例です。過去にユーザーが閲覧・購入した商品のデータを学習し、好みに合致する商品を予測・提示します。
一方、ディープラーニングは機械学習の一種で、多層のニューラルネットワークを用いるのが特徴です。ニューラルネットワークは人間の脳神経回路を模した学習の仕組みであり、より深く物事を学べます。ディープラーニングはより高度な学習が自動でできるため、通常の機械学習で必要な人間の指示が不要になります。
機械学習とディープラーニングの使い分け
通常の機械学習とディープラーニングはそれぞれメリット・デメリットをもち、目的や環境に応じて使い分けられています。では、どのような観点で使い分ければよいのでしょうか。4つのポイントを紹介します。
結果がわかるまでの時間
機械学習のほうが速やかに学習できます。ディープラーニングほど深く学習しない分、少ない演算量で処理できるためです。よって、ディープラーニングと機械学習のどちらでも対応できる場面では、機械学習が使われます。
たとえば、短い期間で成果を出さなければならないプロジェクトには、機械学習が向いています。目的が明確であれば、アルゴリズムの選定にも時間がかかりません。逆に、どう学習させればよいか目処が立たない状況は、ディープラーニングでじっくり取り組むほうがよいでしょう。
ハードウェアのスペック
ディープラーニングの高度な処理を行うには、ハードウェアに高いスペックが求められます。専用のハードウェアなら数秒で処理できる反面、安価なハードウェアでは数週間かかるなど、スペックが及ぼす影響は甚大です。
ちなみに、機械学習に用いられるプロセッサはCPUではなくGPUです。機械学習では並列処理が求められますが、CPUは並列処理が苦手なため、それを得意とするGPUが使われます。性能の優れたGPUは100万円以上する場合もあり、安価なものではありません。
データの種類
ディープラーニングでは深く学習する分、より多くのデータが求められます。複雑な課題を解決したいのであれば、膨大なデータを用意しなければなりません。手書き文字を判読してテキストデータ化するOCRや、自動翻訳ソフトなどが代表例です。
反対に、データが少ない場合は機械学習を用いることになります。使用するアルゴリズムによっては、少数のデータでも十分な学習が可能です。ただし、上記のような複雑な課題を解決するのは難しいでしょう。
説明責任の有無
機械学習は人間の支配下にあります。どのデータからどのように学ぶのか、エンジニアの手でコントロール可能だからです。AIがなんらかの答えを出力した際、なぜその答えが出たのか人間が把握できます。
一方、ディープラーニングにおける学習過程は、ブラックボックス化されています。AIがどのように理解を深めているのか、人間には判断できません。入力されたデータや、出力された分析・予測結果はわかりますが、途中の処理は誰も把握していないことになります。 「結果だけわかればいいじゃないか」という意見もあるかもしれません。ECサイトにおけるオススメ商品の提示ならそれでよいでしょう。
しかし、説明責任という観点で見ると、ディープラーニングは危険性を含みます。医療における診断ミスや、自動運転車の事故が生じた際、事故の原因を被害者に説明できないからです。ディープラーニングは使うシーンを選ぶ技術といえるでしょう。
ディープラーニングの活用事例
最後に、ディープラーニングが実際に活用されている事例を紹介します。
画像認識
画像認識はディープラーニングが得意な作業の1つです。従来であれば人間の目で確認しなければならなかった作業を、機械が代行できるようになりました。 たとえば、製造業においてベルトコンベア上を流れている物品を認識し、不良品を検出します。動画から来店客の動向を分析したり、顔を記憶することで顔認証を行ったりと、用途は多岐にわたります。
画像認識ができるようになるには、大量のデータが必要です。たくさんの画像を認識することで、写っているものが何なのか判断可能になります。データが多いほど認識精度が向上します。
音声認識
画像認識が人間の目を担う機能ならば、音声認識は耳を担う機能といえるでしょう。聞き取りを必要とするさまざまな場面で活躍しています。
例えば、製造業において機械の故障は、ビジネスチャンスの大きな損失につながりかねません。可能であれば、故障する前に前兆を察知したいところです。そこでディープラーニングの音声認識を使えば、正常な駆動音と異常な音を区別できるようになります。人間では認識できない微細な差でも、多層のディープラーニングを用いることで検出可能です。ほかには、音声認識による文字入力や、外国語の翻訳などにも使われています。
自然言語処理
自然言語処理とは、私たちが日常的に話したり書いたりする言語を処理する技術のことです。言語情報はほかの情報と比べて複雑なため、ディープラーニングが適した分野といえます。
例として、機械翻訳や文書管理システムなどに利用されています。いずれも従来であれば人間が目視と手作業で行う必要がありましたが、ディープラーニングの力により自動化できるようになりました。
自動運転
自動運転技術にもディープラーニングが使われています。状況を認知・判断し、操作を行うのが自動運転技術ですが、そのうち認知をディープラーニングが担っています。カメラで捉えた膨大な情報にもとづき、どう運転するのが正しいのかをAIが判断するのです。
非常に高度な処理を要するため、実際の道路で自動運転車を走らせるのは困難だといわれてきました。しかし、技術は進歩を続けており、自動運転車の一般化は着実に進んでいます。
まとめ
AIという大きな領域に機械学習が含まれ、機械学習のうちにディープラーニングが内包されます。より深く学習するディープラーニングは、通常の機械学習よりも利用するハードルが高いのが特徴です。
しかし、ディープラーニングでしかできないことも多くあり、画像認識や自動運転など多くの用途で活用されています。今後のビジネスを考えるうえで重要な存在といえるでしょう。