フレックスタイム制において欠勤控除を適用することは可能?
欠勤控除とは、欠勤した日数分・時間分の賃金を給与から差し引くことです。フレックスタイム制では、清算期間内に所定の総労働時間を満たしている限り、基本的に欠勤控除は適用できません。ただし、所定の労働時間を下回っている場合や、労働日の欠勤など、条件によっては控除が認められるケースもあります。
清算期間の総労働時間を満たしていれば控除不可
フレックスタイム制では、始業・終業時刻や1日の労働時間を従業員が柔軟に決められます。ただし、1〜3か月の「清算期間」内で、所定の総労働時間を満たすことが前提です。
清算期間の総労働時間は「1日の標準労働時間×所定労働日数」で求められます。例えば1日の標準労働時間を8時間、所定労働日数を20日とした場合、160時間は必ず働く必要があります。その総労働時間を満たした場合は、基本給分の労働を行ったことになるため、欠勤控除はできません。
欠勤控除の可否一覧表(フレックスタイム制)
清算期間内における労働時間や出勤状況によっては、欠勤控除が認められるケースもあります。以下の表では、代表的なケースごとに欠勤控除が可能かどうかをまとめました。
ケース | 欠勤控除の可否 | 理由・補足 |
---|---|---|
清算期間内の実労働時間が総労働時間を満たしている | できない | 所定労働時間分の労務提供がされているため賃金控除は不可 |
清算期間内の実労働時間が総労働時間を下回っている | できる | 労務提供が不足しており、労働義務未達分について賃金控除が認められる |
所定の労働日に出勤していない | できる | 労働日の自由変更は認められておらず、出勤しなければ欠勤扱い |
コアタイムに遅刻・早退しても、総労働時間は満たしている | できない | 結果的に労働時間要件を満たしていれば控除は不可。処分は別途検討 |
コアタイムに遅刻・早退し、総労働時間も満たしていない | できる | 清算期間で労働時間が不足していれば、賃金控除対象 |
控除の可否判断は、実労働時間や出勤状況を正確に把握できていることが前提です。勤怠管理システムを導入すれば、フレックス制度における勤務時間や欠勤状況の可視化・自動集計が可能になります。自社にあうシステムを比較・検討したい方は、以下より資料請求をご活用ください。
なお、フレックスタイム制の概要や導入の注意点などは以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
皆勤手当の不支給や賞与査定への反映は可能
コアタイムに欠勤しても、フレックスタイム制では清算期間内の総労働時間を満たしていれば欠勤控除の対象にはなりません。とはいえ、これではコアタイムの意義が薄れてしまいます。そのため、コアタイム遵守を促すルールを別途就業規則に定めることが重要です。
例えば、コアタイムに欠勤した場合の対応として、皆勤手当の不支給や賞与査定への反映、一定回数の欠勤でフレックス勤務の適用を制限するなどの措置が考えられます。ただし、設定可能なペナルティの限度は労働基準法によって定められていることに注意する必要があります。
参考:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き|厚⽣労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索
フレックスタイム制における労働時間と賃金の考え方
ここからは、フレックスタイム制における労働時間と賃金の考え方を詳しく解説します。
不就労分は給与から控除するか、次の期間に繰り越す
実労働時間と給与の関係は、以下のように整理できます。
-
● 実労働時間が総労働時間を超えた場合
超過分に対して 残業代(割増賃金) を支払う必要があります。 -
● 実労働時間が総労働時間に満たない場合
不足分については、以下いずれかの対応が可能です。- ・給与から控除する
- ・次の清算期間に繰り越して相殺する
ただし、繰り越した不就労分が次の清算期間で法定労働時間を超過した場合、時間外労働となり割増賃金の支払いが必要です。一方で、超過した労働時間は次の清算期間に繰り越すことはできません。これは、労働基準法において、労働に対する賃金はその都度全額払うと定められているためです。
このように、清算期間内で実労働時間が総労働時間に満たないと、従業員にも企業にも多少の不都合が生じます。これを防ぐには、清算期間中に労働時間の進捗を把握し、必要に応じて本人に通知・調整を促すとよいでしょう。
なお、こうした時間管理の運用が煩雑になりがちなフレックスタイム制では、勤怠管理システムの導入が有効です。月間の進捗や時間超過・不足をリアルタイムで把握でき、従業員へのアラート通知も自動化できます。

休日労働や深夜労働は通常の労働と同様に扱う
フレックスタイム制は始業・終業時刻を従業員が自由に決められる制度ですが、休日は自身で設定できません。労働基準法では、労働者に最低でも週1日または4週に4日の法定休日を与えることが義務付けられており、フレックス制でもこのルールは適用されます。休日の取り扱いについては、就業規則や雇用契約書で確認しておくことが大切です。
また、休日労働や深夜労働についても、フレックス制に特別な例外はなく、通常の就労形態と同様に対応する必要があります。
- ●休日労働:法定休日に勤務した場合は35%以上の割増賃金が必要
- ●代休:代替休日を設定しても休日労働分の割増賃金は必要
- ●深夜労働:22時~翌5時の勤務には最低でも25%以上の割増賃金が必要
以下の記事ではフレックスタイム制における割増賃金について詳しく解説している ので、あわせて確認してください。
まとめ
フレックスタイム制は、始業・終業時刻の決定を本人に委ねる制度です。そして実労働時間が総労働時間をクリアしていれば遅刻や早退、欠勤をしても欠勤控除は適用できません。設定したコアタイムを守らない場合は、皆勤手当の不支給や賞与査定への反映などでペナルティを与えるのがよい方法でしょう。
また、フレックスタイム制でも休日労働や深夜労働には割増賃金を支払う義務があるので、従業員一人ひとりの勤怠管理は正確に行われなければなりません。勤怠管理システムを導入すれば時間外労働の計算を自動化できるので、管理者の負担は大幅に減少します。以下の記事では定番の勤怠管理システムを紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
フレックスタイム制は2019年4月に大幅な改正が行われており、旧来清算期間の上限であった1か月は3か月へ拡大されました。3か月単位のフレックスタイム制を採用する場合には別途、週換算の労働時間の管理も必要となりますので、一度専門家に相談するなど、法違反となる前に先手の労務管理体制を構築することが肝要です。