給与明細の電子化とは
給与明細の電子化とは、紙で配布していた給与明細を電子メールやPDF、クラウドなどの電子データに変換して交付することです。給与明細を電子化すると、給与明細の印刷や封入、配布や郵送といった作業工程を大幅に短縮できるため業務効率が向上します。また、書類の作成にかかっていた人的コストや印刷コストの削減も可能です。

給与明細の電子交付方法
国税庁のホームページでは、以下3つの方法で 給与明細の電子交付を認めています。
- 1.電子メールを利用する方法
- 2.社内LAN・WANやインターネット等を利用して閲覧する方法
- 3.フロッピーディスク、MO、CD-ROM等の磁気媒体等に記録して交付する方法
一般的には、電子メールで送付する方法とクラウド上で閲覧させる方法が広く利用されています。
給与明細電子化の法的要件
給与明細の電子化を進める際は、労働基準法にもとづく法的要件を満たすよう社内規程や運用フローを整備する必要があります。
- ■従業員の同意
- 電子交付の条件として、従業員からの同意取得が必要。同意は口頭によるものではなく、証拠として残さなくてはならないため、同意書を作成する。同意が得られない場合は紙で交付する義務がある。
- ■印刷の可能性
- 従業員が給与明細の内容をいつでも確認し、必要に応じて紙に印刷できる環境を整備すること。
- ■記録の保存
- 電子データとして長期保存(給与明細や賃金台帳の電子データ保存期間は原則5年間)できること。
同意書の作成手順や提示すべき内容などについては、以下の記事で詳しく紹介しています。あわせて参考にしてください。
【管理者視点】給与明細電子化のメリット
給与明細の電子化には、管理者と従業員それぞれにメリットがあります。まずは管理者視点でのメリットを見ていきましょう。
コスト削減
給与明細を電子化すると、専用紙や封筒代、印刷費、郵送費などの物理的なコストやこれらの作業にかかわる人件費もあわせて削減できます。さらに給与や賞与だけでなく、源泉徴収票や支払調書、社会保険改定通知書などさまざまな帳票も電子化すれば、大きな削減効果が可能です。
例えば1,000人規模の企業では、紙代・郵送費・印刷メンテナンス費用などで年間100万円を超えることも珍しくありません。 電子化によりこれらのコストを9割以上カットできれば、経営に与えるインパクトは非常に大きいといえます。
実際に給与明細を電子化したことで、これらのコストがほぼ0に近いレベルで圧縮されたという事例もあります。
参考:導入事例:給与明細電子化 S-PAYCIALwith電子給与明細(オリジン東秀株式会社様)|ITトレンド
誤配付などのミスを防止
給与明細を配布する場合、印刷ミスや配付漏れ、誤配付、遅延などのヒューマンエラーも起こりがちです。
システムで給与明細を電子化すれば、設定した日付や時間に自動で明細を配信するため、配付の遅延も回避できます。さらに給与明細の配付前に、複数の承認者が確認するワークフロー機能を搭載している製品もあり、誤配付や誤記載も未然に防げます。
配信ログが残るため、「きちんと送られたか」「いつ誰が開封したか」をあとから証跡として確認でき、内部統制や監査対応の面でも安心です。
給与業務担当者の作業負担軽減
給与明細の配布にかかわる作業には、印刷・仕訳・封入・配送と複数の工程を要し、3~4日かかるケースもあります。この工程にシステムを導入すればわずか数分で作業が完了します。
給与計算後のデータをCSVで出力し、システムに取り込むだけなので、担当者の業務負担も大きく軽減。余剰リソースを別の付加価値の高い業務へ振り向けることが可能になります。急な賞与や臨時支給時にも迅速に発行でき、従業員対応のスピードも格段に向上します。
紛失リスクの軽減
給与明細を電子化すれば、クラウドや安全性の高いサーバにデジタル保存されるため、紙の明細書と異なり紛失のリスクはありません。データは定期的にバックアップされるため、サーバの障害やデータの破損が発生しても復元できます。
また、アクセスログ管理や多要素認証を利用することで、不正アクセスや情報漏えいのリスクを大幅に抑えられるのも特徴です。
ESG・ペーパーレス経営の推進
昨今注目されるSDGsやESGの観点からも、ペーパーレス化は重要な施策です。 給与明細を電子化することで、紙資源やインクの使用を削減し、環境負荷を低減できます。 環境配慮型企業として社外へアピールできる点も見逃せません。
給与明細電子化システムは、企業にとってこれだけ多くのメリットがあります。以下のボタンから複数製品の資料をまとめて請求できるので、ぜひ気軽に比較してみてください。
【従業員視点】給与明細電子化のメリット
従業員にとっても、給与明細を電子化することで以下のメリットがあります。
いつでもどこでも給与明細を確認できる
パソコンやスマートフォン、タブレットなどのモバイル端末があれば、外出先や自宅からでも給与明細をすぐに確認できます。給与日を待って自宅で封筒を開ける必要がなく、旅行中やテレワーク中でも安心です。
過去の給与明細も簡単に閲覧・ダウンロードできる
システム上に過去の給与明細が保管されるため、必要なタイミングでいつでも確認可能です。再発行依頼をする手間もなく、年度ごとのデータをまとめてダウンロードしておくこともできます。
賞与や源泉徴収票などの重要書類も一元管理できる
給与明細だけでなく、賞与明細や源泉徴収票、社会保険料変更通知書などもWeb上で一括管理できます。年末調整や確定申告の際に探し回る必要がなく、効率よく手続きを進められます。
申請や手続きをスマートに行える
住宅ローンの申し込みやクレジットカード作成、各種補助金申請時など、収入証明として給与明細を提出する機会は意外と多いものです。電子化された給与明細であれば、過去分をすぐにダウンロードでき、必要な時に必要な期間分だけ印刷して提出可能なため、従業員にとって非常に便利です。
紙ファイル不要で管理が楽になる
紙の明細はつい自宅で紛失したり、退職後に整理する際にどこにしまったかわからなくなったりすることもあります。電子化された給与明細ならクラウドで保管され、管理が簡単。「いつでもログインして確認できる安心感」が従業員満足度の向上にもつながります。
企業側・従業員側双方に多くのメリットがある給与明細電子化システム(Web給与明細システム)。最適なシステムを選ぶために、以下のボタンから無料で一括資料請求が可能です。ぜひ資料を取り寄せて詳細を確認してみてください。
給与明細電子化のデメリット
給与明細の電子化には、導入前に知っておくべき注意点もあります。詳しく見ていきましょう。
セキュリティリスクがある
給与明細の電子化には、不正アクセスや情報漏えいのリスクが伴います。個人情報を扱うため、システムの脆弱性対策や厳格なパスワード管理、ウイルス対策が不可欠です。 SSL暗号化や多要素認証、IP制限などの仕組みを備えた製品を選ぶのがおすすめです。
また、入力ミスやメール誤送信防止のために複数承認を設定するなどのチェック体制を整え、従業員にも定期的なパスワード変更を促しましょう。
ITが苦手な従業員にはハードルになる
高齢者やITに不慣れな従業員にとって、給与明細の電子化は操作が難しく感じられることがあります。特にスマホを所有していない従業員や、メールアドレスを持っていないパート・アルバイト層では、そもそも電子化の仕組み自体が馴染みにくいケースもあります。
こうした場合はシンプルなインターフェースを備えたシステムを選ぶとともに、操作マニュアルを用意したり、導入時に操作説明会を実施したりするなどのフォローが重要です。
ログイン関連の問い合わせや運用負担が発生する
電子化に移行すると、給与明細の内容以外にも「IDを忘れた」「パスワードを再発行してほしい」といった問い合わせが発生しやすくなります。これまで封筒を配るだけで済んでいたものが、ログインに関する社内サポート業務が増える点は理解しておく必要があります。
運用負担を軽減するため、パスワードリセットのセルフ対応機能や、社内ヘルプデスク体制の整備も検討するとよいでしょう。
参考:クラウドサービス提供における情報セキュリティ対策ガイドライン(第3版)|総務省
給与明細を電子化する手順
以下では、給与明細を電子化する際の具体的な手順について紹介します。紙の明細からWeb明細への移行をスムーズに進めるために、事前準備から運用開始までの流れを確認しておきましょう。
1.電子化する範囲を決める
給与明細以外に賞与明細や源泉徴収票、年末調整通知など、どこまで電子化するかを明確にします。電子化対象を決めることで、業務の効率化やペーパーレス化の効果が最大化され、導入後の混乱も避けやすくなります。社内の帳票管理状況もあわせて棚卸しておくとよいでしょう。
2.電子化した給与明細の配布方法を決める
給与明細の配布には、メール配信やWeb上での閲覧、PDFファイルでの受け取りなど多様な手段があります。従業員のスマートフォン保有率や操作スキル、担当者の業務負担を考慮しながら、自社に最適な配布方法を選びましょう。PDF出力や配布形式を選べる製品なら、従業員ごとの閲覧環境や希望配布形式に柔軟に対応できるため、利便性が高まります。
3.従業員の同意を得る
給与明細の電子化は、所得税法にもとづき従業員の同意が必要です。従業員が給与明細の電子化に同意しない理由には、「紙の方が安心」という心理的な要素やIT操作への不安、私用アドレスの登録回避、情報漏えいへの懸念などが挙げられます。
給与明細を電子化するメリットや安全性を伝え、従業員の不安を取り除けるよう説明会を開催するのがおすすめです。万が一同意が得られない場合は、従来どおり紙での配布が求められます。
4.適切な給与明細電子化システムを選定する
給与明細システムには、「既存の給与計算ソフトと連携して利用するタイプ」「給与計算+明細電子化一体タイプ」「人事・労務まで管理できるタイプ」の3つがあります。
一般的には、既存の給与計算システムから給与データを取り込む必要がありますが、多くはCSVやAPIで連携します。既存の給与計算ソフトを引き続き活用するか、リプレースするかを軸に最適なタイプを見定め、連携性や機能性などを比較してみましょう。
以下の記事では、給与明細を電子化するうえでの注意点について詳しく解説しています。
給与明細の電子化にはシステム導入がおすすめ
給与明細を電子化するなら、給与明細電子化システム(Web給与明細システム)を導入するのがおすすめです。給与明細電子化システムには、以下の機能が搭載されており、印刷・封入・郵送などの手間やコストを削減します。
基本機能 | 内容 |
---|---|
メール配信 | 給与明細データを従業員へ自動配信する |
Web閲覧 | Webブラウザで閲覧可能な専用ページへ従業員がアクセスし、給与明細閲覧・ダウンロードが行える |
スケジュール設定 | Web公開日の設定やメール配信予約ができる |
外部システム連携 | 給与計算ソフトウェアや勤怠管理システム、チャットツールなどと連携できる |
配布手段選択 | Webページ上での閲覧・PDFの受信など、従業員が希望する配布手段を選べる |
給与明細の電子化に最適なシステムはどれ? 以下の記事では、最新のおすすめWeb給与明細システムを比較しているので、ぜひあわせてご覧ください。
人気の給与明細電子化システム
ここでは、実際にどのような給与明細電子化システムがあるかを見ていきましょう。ITトレンド年間ランキング2024「Web給与明細(給与明細電子化)システム」部門で、資料請求数が多かった上位3製品を紹介します。
ポケット給与
- 給与明細をスマホ・PC・タブレットで、いつでもどこでも閲覧可能
- 年末調整・マイナンバー収集・オリジナル帳票など幅広く電子化!
- 充実した機能と分かりやすい操作性で業務をサポート
ITトレンド年間ランキング2024Web給与明細(給与明細電子化)システム1位
株式会社ICSソリューションズが提供する「ポケット給与」は、従業員の希望にあわせて給与明細の受け取り方法を12種類から個別設定できるのが特徴です。給与明細のほか、賞与や源泉徴収票にも対応しています。さらに、社会保険料変更通知書や昇給通知書、請求書などのオリジナルフォームも用意されています。
●参考価格:初期費用見積り、月額30円~/ユーザー ※ユーザー数・帳票数・配信数・オプションサービスにより変動
S-PAYCIAL with 電子給与明細
- シンプルな画面構成で、マニュアルいらずの簡単操作!
- PC、スマホ、タブレットからいつでもどこでも明細閲覧が可能!
- 自社データセンターを使用し、高セキュリティで低価格を実現。
ITトレンド年間ランキング2024Web給与明細(給与明細電子化)システム2位
「S-PAYCIAL with 電子給与明細」は、鈴与シンワート株式会社が提供するWeb給与明細システムです。給与明細書のほかに賞与明細書や源泉徴収票、支払調書にも対応しています。また、社会保険改定通知書やアンケート機能など、業務効率化に役立つオプション機能が充実しているのも特徴です。
●参考価格:初期構築費用50,000円、月額40円/帳票 ※最低利用料金1,500円
SmartHR
- Excelや給与計算ソフトのCSVデータを活用し給与明細配布
- 給与明細配布前に内容確認可能
- 貴社独自の給与明細項目も追加可能
ITトレンド年間ランキング2024Web給与明細システム(給与明細電子化)3位
ITトレンド認定Good Productも受賞した、株式会社SmartHR提供の「SmartHR」は、Web給与明細機能を搭載したクラウド型の人事労務管理ソフトです。給与明細の電子化だけでなく、人事データも一括管理したい企業におすすめです。また、給与データのCSVインポート後に確認フローを挟み、従業員へ通知を送る前に内容をチェックできるためミス防止にも効果的でしょう。
●参考価格:別途お問い合わせ
以下のボタンから、最新のランキング情報を確認できます。問い合わせが多い人気製品を紹介しているので、傾向の把握や比較検討にもお役立てください。
PDF化した給与明細の印刷は可能か
電子化された給与明細は、システム上でPDF形式として保存・閲覧が可能であり、必要に応じて容易に印刷できます。多くのシステムでは、明細画面に印刷ボタンを設置しているため、紙の明細が必要な場合でもスムーズに対応できます。労働基準法を満たすためにも、このような印刷機能が備わっているシステムを選択するとよいでしょう。
給与明細電子化に関するよくある質問
ここでは、給与明細を電子化する際によく寄せられる質問と、その回答をまとめました。導入を検討する際の参考にしてください。
- Q1.給与明細の電子化は従業員に強制できますか?
- いいえ、給与明細を電子化するには従業員の同意が必要です。労働基準法上、同意のない従業員には紙で交付する義務があるため、電子化を進める際は同意書を取得し、同意しない場合は従来通り紙で配布できる体制を整えておくことが重要です。
- Q2.電子化した給与明細はどこまで保存義務がありますか?
- 給与明細や賃金台帳の保存期間は、労働基準法施行規則で原則5年間と定められています。電子データとして保存する場合も同様で、法定期間は正しく保管し、いつでも閲覧・出力できる環境を用意しておく必要があります。
- Q3.無料で給与明細を電子化できますか?
- 給与明細を電子化できる無料ツールも存在しますが、多くは機能制限があるか、従業員数が増えると有料になるケースが多いです。セキュリティや運用サポート、法対応を考えると、有料の給与明細電子化システムを導入する企業が主流です。まずは複数の製品資料を取り寄せ、コストや機能を比較してから検討してみてください。
給与明細電子化システムはコスト削減や業務効率化、従業員満足度向上に大きく貢献します。以下より複数製品の資料を一括請求できるので、ぜひ比較検討にお役立てください。

まとめ
給与明細を電子化すると、ペーパーレス化や作業効率の向上、コスト削減など多くのメリットがあります。給与明細電子化システムの導入を検討する際は、既存の給与計算システムとの相性やセキュリティ面にも配慮しながら、最適な製品を選びましょう。
まずは気になる製品の資料を請求し、詳細を把握してから比較検討するのがおすすめです。以下のボタンから、おすすめの給与明細電子化システムを一括資料請求(無料)できるので、ぜひご利用ください。