第三者保守とは
第三者保守とは、メーカー保守が終了したIT機器に対し、外部の専門業者が提供する障害対応や部品交換などの保守サービスです。メーカー保守に代わって機器の障害対応や部品交換、オンサイトサポートなどを担い、機器の延命と安定運用を実現します。
第三者保守とEOSL保守の違い
第三者保守は、メーカー以外の業者が提供する保守サービス全般を指します。対象機器は必ずしもメーカー保守が終了しているとは限らず、幅広い状況に対応するのが特徴です。
一方で、EOSL保守はメーカー保守終了後の機器に特化した保守サービスを指します。つまり、EOSL保守は第三者保守のなかでも「保守終了製品」に特化した形態といえます。
EOL・EOS・EOSLの違い
EOL(End of Life)は製品のライフサイクル終了、EOS(End of Sale)は販売終了日、EOSL(End of Support Life)はメーカーの保守・サポート終了を意味します。
それぞれの違いを以下の表で簡潔に整理しました。
略語 | 正式名称 | 意味・タイミング |
---|---|---|
EOL | End of Life | 製品のライフサイクル終了(主に製造終了の段階) |
EOS | End of Sale | 販売終了日。以降は新品としての購入ができなくなる |
EOSL | End of Support Life | メーカーによる保守・サポートの提供終了 |
なぜ今、第三者保守が必要とされるのか
第三者保守は、ITインフラの長期安定運用や、コスト制約・環境配慮といった企業課題に対応する選択肢として注目を集めています。ここでは、現代のIT運用において第三者保守の導入が求められる背景を解説します。
保守終了(EOSL)機器の継続運用ニーズの高まり
メーカーによる保守が終了(EOSL)した機器でも、現場では引き続き稼働が求められるケースが多くあります。しかし、代替機の調達やシステムの再構築をすぐに行うのは容易ではありません。こうした状況を踏まえ、既存機器を安定して使い続けるための現実的な選択肢として、第三者保守の導入に注目が集まっています。
高騰するIT設備更新コストへの対応
近年、半導体不足や物価上昇、為替の影響などにより、IT機器の価格は大幅に上昇しています。こうした状況下で、全社的な設備更新を一度に実施するのは、予算面で大きな負担となります。既存のIT資産を有効活用するためにも、第三者保守を導入して運用体制を見直す必要性が高まっています。
サステナビリティ志向への対応と社会的要請
環境への配慮や廃棄物の削減が重視されるなかで、IT機器を必要以上に更新し続ける運用には見直しの声が高まっています。使用可能な資産を長く活用する第三者保守は、持続可能なIT運用の実現に貢献します。
CSR(企業の社会的責任)やESG(環境・社会・ガバナンス)への対応が求められる現在では、こうした取り組みは企業の社会的責任としても重要な意味をもつでしょう。
第三者保守を導入するメリット
次に、企業が第三者保守を採用することで得られる代表的な4つのメリットを解説します。
保守コストの大幅削減
第三者保守はメーカー保守に比べて費用が抑えられることが多く、保守コストを大幅に削減できます。パソコンやネットワーク機器など多数のIT資産を運用している企業では、保守費用の削減効果が非常に大きく、IT予算全体の見直しにもつながります。
保守期間の延長によるIT資産の延命
メーカー保守が終了(EOSL)した機器も、第三者保守を活用することで継続使用が可能になります。設備更新のタイミングも自社の事情にあわせて計画的に見直せるため、突発的な投資を避けつつ、IT資産をより戦略的に活用できます。
マルチベンダー環境の一括サポート
異なるメーカーのIT機器が混在する環境では、それぞれの保守窓口が異なり、管理が煩雑になりがちです。第三者保守サービスの多くはマルチベンダー対応が可能です。窓口を一本化できるため、運用負荷の軽減や保守対応の迅速化が図れます。
BCP・DR対策にも有効
第三者保守は、事業継続計画(BCP)や災害復旧(DR)の観点からも有効です。障害発生時に迅速なオンサイト対応や代替機の提供を受けられ、システム停止リスクを最小限に抑えられます。予期せぬトラブルにも柔軟に対応できます。
第三者保守を導入するデメリット・注意点
第三者保守には多くのメリットがありますが、一方で注意すべきリスクも存在します。以下のような点を把握したうえで、慎重に導入を検討することが重要です。
- ■部品調達の困難さ
- 古い機器では必要な部品が市場に出回っていないことがあり、迅速な調達が困難な場合があります。特に海外メーカー製の旧型機器や特殊機材は、入手までに数週間~数か月を要することも。障害対応が長引くリスクがあります。
- ■メーカー保証や認証の無効化
- メーカーのサポート期間中に第三者保守を導入すると、メーカー保証や各種認証が無効になる可能性があります。将来的なアップグレードやメーカーサポートを受けられなくなるリスクが生じます。
- ■法的および契約上のリスク
- 保守契約期間中に第三者保守へ切り替えると、契約違反やライセンス条件の逸脱と見なされる可能性があります。また、部品調達やサービス提供の過程で知的財産権に関する問題が発生するリスクもあるため、契約内容の確認が不可欠です。
- ■最新技術の導入機会損失
- 現行機器を延命することで、最新技術や高性能な機器への更新機会を逃す恐れがあります。業務効率やセキュリティ性能、電力消費などの面で、長期的な損失につながる場合も。
- ■ベンダーの継続性リスク
- 提供元の第三者保守業者が突然サービスを終了するケースもあり、長期的な保守体制が維持できないリスクがあります。導入前には、業者の経営基盤やサポート体制、実績を慎重に見極めることが重要です。
第三者保守の導入例
次に、実際に第三者保守が活用されている業種の一例を紹介します。
製造業:古い設備の稼働延命とコスト最適化
製造業では、生産ラインで稼働している産業用サーバや制御機器の保守に、第三者保守サービスが利用されています。老朽化した設備でも部品交換や障害対応が可能で、機器更新のタイミングを遅らせられます。稼働停止による損失を防ぐため、ダウンタイム最小化を重視する現場でも導入が進んでいます。
金融・保険業:高信頼性が求められるシステムの維持
金融・保険業界では、ATMシステムやデータセンター機器など、常時稼働が求められるシステムの保守に第三者保守が用いられています。障害発生時の迅速な対応や柔軟なサービス提供により、BCP対策の一環としても活用されています。
地方自治体・公共系:更新予算の制約下でのインフラ維持
地方自治体や官公庁では、財政上の制約からITインフラのリプレイスが難しいケースも多く、古いサーバや通信機器を維持するために第三者保守が利用されています。更新予算が限られていても、安定運用を維持しながら、コストを最小限に抑える取り組みが進んでいます。
第三者保守サービスの選び方
第三者保守サービスを導入する際は、自社の運用方針やリスク耐性にあった業者を選ぶことが重要です。以下の4つの観点から、複数の業者を比較・検討しましょう。
対応メーカー・機器の範囲
対応可能なメーカーや機種は業者によって異なります。特にマルチベンダー環境を運用している場合は、複数メーカーの機器を一括でカバーできる業者が便利です。
第三者保守の多くは旧型機器を対象としており、最新モデルには未対応のケースもあります。自社の機器がサポート対象かどうか、あらかじめ確認しておきましょう。
保守拠点のカバー率・SLAの内容
障害発生時の対応速度を左右するのが、保守拠点の立地や体制です。全国対応可能か、地方拠点でも迅速に対応できる体制があるかを確認しましょう。
また、SLAの内容(対応時間・復旧時間・受付時間など)が明確であるかも重要です。事前にSLAの水準を比較し、自社の求めるレベルに適合するか判断しましょう。
障害対応のスピードと柔軟性
業者によって対応体制は異なります。平日営業時間内のみ対応のところもあれば、24時間365日体制でサポートしている業者もあります。そのため、障害発生時にどの時間帯でも対応してもらえるかどうかの確認が必要です。
加えて、障害時の初動対応の速さや、リモートによる一次対応、現地駆けつけの可否といった対応スピードや柔軟性のレベルもチェックポイントです。特に、業務への影響が大きいIT資産では、24時間対応や即時対応の有無が保守サービス選定の決め手となります。
実績や信頼性
過去の導入実績や取引先の業種・規模、保守対象台数などから、業者の信頼性を見極めましょう。大手企業や官公庁への導入経験が豊富な業者は、技術力や運用体制の整備が進んでいる傾向にあります。また、長年にわたる運営実績があるかどうかも、継続性の観点から重要です。
おすすめの第三者保守サービス一覧
ここでは、信頼性と実績を兼ね備えた主要な第三者保守サービスを紹介します。
第三者保守・EOSL延命保守サービス
株式会社ゲットイットの「第三者保守・EOSL延命保守サービス」は、独自の部品調達ルートと経験豊富な技術者による対応で、長期にわたる安定運用を支援しています。マルチベンダー環境への柔軟な対応にも定評があります。
第三者保守サービス
株式会社エスエーティが提供する「第三者保守サービス」は、全国に展開するサービス拠点と豊富な部品在庫により、迅速な障害対応を可能にします。24時間365日のサポート体制も整っており、企業の安定したビジネス継続をバックアップします。
延長保守(第三者保守)サービス
三和コンピュータ株式会社が提供する「延長保守(第三者保守)サービス」は、柔軟な保守プランが特徴で、顧客のニーズに応じたカスタマイズ対応が可能です。中小企業から大企業まで、幅広い企業に支持されています。
【EOL/EOSL】NEC第三者保守(ハードウェア保守)
アプライドテクノロジー株式会社が提供する「【EOL/EOSL】NEC第三者保守(ハードウェア保守)」は、NEC製品に特化した保守サービスです。豊富な実績と専門的な知識を活かし、メーカー保守終了後も長期にわたる安定運用を支援します。
つなぎ保守(第三者保守/EOSL保守)
ブレイヴコンピュータ株式会社が提供する「つなぎ保守(第三者保守/EOSL保守)」は、短期間のつなぎ保守から中長期の延命運用まで、利用状況に応じて柔軟に選択できるのが特徴です。急なメーカー保守の終了にもスムーズに対応できます。
第三者保守サービスの導入を検討する際には、IT資産全体の管理やコスト最適化も重要なポイントです。以下の記事では、IT資産管理ツールの比較と選定ポイントを詳しく解説しています。
まとめ
第三者保守は、メーカー保守が終了したIT機器を引き続き有効活用したい企業にとって、コスト効率と運用の柔軟性を兼ね備えた選択肢です。特に、複数メーカーの機器が混在する環境や、設備更新の予算・タイミングに制約がある場合には、導入効果が大きくなります。
一方で、部品調達の可否や契約条件との整合性など、導入に際して確認すべきポイントもあります。自社のIT運用方針にあった保守体制を構築するためには、信頼できる第三者保守業者を慎重に比較・検討しましょう。
この記事で紹介した主要サービスを参考に、ニーズにあった保守体制を見つけてください。また、第三者保守とあわせてIT資産全体の可視化・最適化を図るなら、IT資産管理ツールの併用も効果的です。ぜひ資料請求を活用して、より効率的な運用を目指しましょう。