フリーのネットワーク監視ツールとは?OSSとの違いを解説
フリーのネットワーク監視ツールとは、無償で利用できるネットワーク監視ソフトウェアの総称です。ネットワーク機器やサーバの稼働状況をチェックしたり、異常を検知して通知したりする機能を備えています。無料で使えるため初期コストを抑えられ、まずは小規模からネットワーク監視を試したい企業に選ばれています。
よく似た言葉に「OSS(オープンソースソフトウェア)」があります。OSSはソースコードが公開されており、自由にカスタマイズや改良が可能です。一方、フリーソフトは必ずしもソースコードが公開されているわけではなく、あくまで「無償で使えるソフトウェア」を指します。つまり、フリーソフトにはOSSも含まれますが、すべてのフリーソフトがOSSというわけではありません。
このようにフリーソフトとOSSは混同されがちですが、それぞれ特徴が異なるため、自社のニーズにあった製品選びが重要です。
フリーのネットワーク監視ツールでできること・監視項目
フリーのネットワーク監視ツールでは、具体的にどのようなことができるのでしょうか。ここでは代表的な監視機能を紹介します。
SNMP監視(ルーターやスイッチなどの状態監視)
SNMP監視とは、社内ネットワークが正常に稼働しているかを確認する仕組みです。監視ソフトをSNMPマネージャー、監視される機器をSNMPエージェントと呼びます。監視対象はルーター、スイッチ、サーバなどのネットワーク機器です。多くのフリーのネットワーク監視ツールでも、このSNMP監視を利用できます。
死活監視(Ping監視・ICMP監視)
死活監視とは、ネットワーク内の機器が正常に稼働しているかどうかを確認する監視方法です。一般的にはPingコマンドを使い、正常な応答があればその機器は稼働中と判断します。この通信に使われるのがICMPプロトコルで、死活監視はPing監視・ICMP監視とも呼ばれます。
ネットワークの停止はビジネスに大きな損失を与えるため、死活監視は欠かせません。フリーのネットワーク監視ツールでもこの機能を備えています。
トラフィック監視やログ監視
フリーソフトには、ネットワークのトラフィック量をモニタリングしたり、Syslogなどのログを収集・分析できたりするものもあります。ネットワーク全体の負荷状況の把握や、障害発生時の原因調査に役立ちます。
フリーのネットワーク監視ツールのメリット
ここでは、フリーのネットワーク監視ツールを活用するメリットを3つ紹介します。
初期費用ゼロで導入できる
最大のメリットは、ソフトウェア自体が無料で提供されているため、初期費用をかけずにネットワーク監視をスタートできる点です。ハードウェア投資やライセンス料が不要で、小規模のネットワーク監視であればフリーソフトだけで十分対応できる場合もあります。
まずはお試しでネットワーク監視をはじめやすい
「ネットワーク監視を導入したいけれど、本当に必要か分からない」という企業でも、フリーのツールなら気軽に試せます。有償製品を検討する前に、ネットワーク監視の仕組みや使い勝手を体験できるため、将来の本格導入の判断材料にもなります。
製品によっては有償版へのスムーズな移行が可能
多くのネットワーク監視ツールは、無料版から有償版へ機能を拡張できるプランが用意されています。無料版で試してから、そのままデータや設定を引き継いでスムーズにアップグレードできるため、将来的に規模が拡大しても安心です。
フリーのネットワーク監視ツールのデメリット
フリーのネットワーク監視ツールには多くの利点がありますが、一方で注意すべきデメリットもあります。
機能や対応範囲に制限がある
フリーソフトは一部の機能が制限されている場合が多く、以下のような例があります。
- ●監視できるデバイス数に上限がある
- ●同時に操作できるユーザー数が限られている
- ●一部の高度な監視機能が使えない
- ●プラグインや外部ツールとの連携に対応していない
- ●利用できる期間が一定期間に限られる
例えば10デバイスまで、2ユーザーまでなど制限が厳しく、ビジネスで本格運用するには物足りないケースもあります。また広告表示などの不便さがあるソフトもあります。
サポートが不十分でトラブル対応が難しい
フリーのネットワーク監視ツールは、サポート体制がほとんど整っていないことが一般的です。FAQやコミュニティフォーラムだけで、メール対応も英語のみといった場合が多く、問題解決に時間がかかる可能性があります。
特にネットワーク停止は事業に直結するリスクがあるため、迅速な対応が必要な企業では、有償版で充実したサポートを受けられる製品を選ぶほうが安心です。
運用・管理の手間が増える可能性も
フリーのネットワーク監視ツールは、有償版に比べて自動化や統合管理の機能が少ない場合があります。そのため、運用担当者が手動で設定を見直したり、複数のツールを組み合わせて監視環境を維持したりする必要があり、結果的に管理の手間が増えるケースもあります。
セキュリティ更新が遅れやすい
フリーソフトにはメンテナンスが頻繁に行われず、脆弱性への対応が遅れがちなものもあります。ビジネス利用では最新のセキュリティパッチが重要なため、こうした点は慎重に見極める必要があります。
フリーのネットワーク監視ツールの選び方
フリーのネットワーク監視ツールは無償で利用できる反面、機能や対応範囲に制限があることも多く、有償版とは少し異なる視点で選ぶ必要があります。ここでは、フリーだからこそ押さえておきたい選び方のポイントを紹介します。
自社の規模や監視対象にあっているか
フリーソフトは監視できるデバイス数やノード数に上限が設けられている場合が多く、10デバイス程度までに制限されるケースも少なくありません。自社のネットワーク規模にあっているか、将来的に拡張が可能かを確認しましょう。
必要な機能を無料でどこまで使えるか
SNMP監視や死活監視、ログ収集、ダッシュボード表示など、必要とする機能が無料版でどこまで対応できるかを調べることが大切です。プラグインやアラート設定といった一部の高度な機能は有料版のみという場合もあります。
サポートなしでも自力で対応できるか
フリーのネットワーク監視ツールは基本的に手厚いサポートがなく、コミュニティや英語マニュアルを頼りに自力で問題解決する場面も多くなります。導入後にトラブルが発生しても、自分たちで対応できる体制かどうかを考慮して選びましょう。
以下の記事では、ネットワーク監視ツールの詳しい選び方のほか、おすすめのツールを大規模向け・小規模向けに分類し、機能や特徴を比較しています。導入を検討中の方はあわせて参考にしてください。
▶フリーのネットワーク監視ツール12選
ここでは、代表的なフリーのネットワーク監視ツールを紹介します。ネットワークの規模や監視したい内容にあわせて比較検討してください。
Zabbix
「Zabbix」は、ネットワーク機器やサーバの性能・稼働状況を可視化し、問題をリアルタイムで検知できるオープンソース監視ソフトウェアです。LinuxやWindowsを含む幅広いプラットフォームに対応し、障害の自動検知やアラート通知、ダッシュボード機能を備えています。
PRTG Network Monitor フリー版
「PRTG Network Monitor フリー版」は、最大100センサーまで無料で利用可能なネットワーク監視ツールです。トラフィックや帯域、CPU負荷、ディスク容量などを多角的に監視でき、Windows環境での導入が容易です。
Nagios
「Nagios」は、オープンソースのネットワーク監視ツールとして長い歴史をもつ代表的なソフトウェアです。ネットワーク機器やサーバ、サービスの稼働状況を監視し、障害や復旧時にメールやSMSでアラート通知を行います。プラグインによる拡張性が高く、カスタマイズ性に優れているのも大きな特徴です。
Icinga 2
「Icinga 2」は、オープンソースで提供されている監視ツールです。大規模環境でも利用され、構成管理ツールとの統合が容易です。柔軟な監視設定が可能で、複雑なネットワーク環境に対応できます。ダッシュボードによる可視化やプラグイン拡張が豊富で、運用チームによる細かなカスタマイズにも適しています。
IO Navi
「IO Navi」は、ネットワーク機器の設定や監視を行うためのツールです。ルーターやNASなどの状態を視覚的に管理でき、小規模オフィスや店舗に使いやすいのも特徴です。アイ・オー・データ製品との連携がスムーズで、初心者でも簡単にネットワーク機器の管理をはじめられます。
WhatsUp Gold Log Management
「WhatsUp Gold Log Management」は、SyslogやWindowsイベントログなどのログデータを収集・可視化し、ネットワーク内のデバイスの状態を一元的に把握できるログ管理ツールです。ログのフィルタリング、検索、アラート通知、アーカイブ機能を備え、コンプライアンス対応やトラブルシューティングに役立ちます。
CurrPorts
「CurrPorts」は、ローカルコンピュータのTCP/IP・UDPポートのリストをリアルタイムで表示するツールです。それぞれのポートの状態を確認し、不要なプロセスを終了したり、その情報をテキストファイルに保存したりできます。
OpManage
「OpManager」は、ネットワーク機器やサーバに加えて、ミドルウェアまで監視可能な統合監視ツールです。30日間の無償評価版で全機能を試せ、以降は対象機器10デバイスまでの無料版を利用できます。
Watchdog
「Watchdog」は、AIを活用してIoTやアプリケーションのデータをリアルタイムで監視するツールです。指定したタイマー内にデータが受信できなかった場合にアラートを通知し、シンプルな障害検知を行えます。
ThirdEye
「ThirdEye」は、ネットワークの帯域幅やスループット、レイテンシー、エラーをダッシュボードで直感的にモニタリングできます。30日の無償評価版を試した後、必要に応じてライセンスを選べます。
Ipswitch
「Ipswitch」は、ネットワーク帯域監視、設定ファイル管理、仮想マシン監視など複数のツール群を提供しており、無料で9種類のツールが利用可能です。ただし、インターフェースは英語のため注意が必要です。
パトロールクラリス
「パトロールクラリス」は、ネットワーク機器やストレージ機器など多様な機器を監視できる日本製ツールです。60種類以上の監視機能のうち、無料版では2つを利用可能。レポート機能やアクション設定も備えています。
安定して監視を行いたい場合は有償版を検討しよう
フリーのネットワーク監視ツールには、SNMP監視や死活監視など、基本的な監視機能が備わっており、最低限の監視体制を構築することは可能です。
しかし、一部の機能が制限されていたり、サポートが充実していなかったりといった弱点があるのも事実です。特に、ネットワーク障害は企業活動に大きな影響を及ぼすため、長期的に安定した運用を目指すなら、手厚いサポートや高度な機能が利用できる有償版の導入を検討するのがおすすめです。
以下のボタンからは、有償版ネットワーク監視ツールの比較資料を無料でまとめて取り寄せられます。複数製品を比較し、自社に最適なツール選びにぜひ役立ててください。
フリーのネットワーク監視ツールに関するよくある質問
次に、フリーのネットワーク監視ツールの導入を検討する際によくある質問を紹介します。
Q1. 無料ツールでも大規模ネットワークに使えますか?
多くのフリーのネットワーク監視ツールは、監視できるデバイス数やノード数に上限があり、10〜20台程度に制限されるケースが一般的です。大規模ネットワークを管理する場合は、将来的な拡張性や監視対象の上限を十分に確認するか、初めから有償版の導入を検討したほうが安心です。
Q2. 無料と有料はどちらを選ぶべきでしょうか?
ネットワーク規模が小さく、最低限の監視だけでよい場合はフリーのツールでも問題ありません。しかし、障害時の迅速な対応や高いセキュリティレベルが求められる企業では、有償版のほうがサポートや高度な監視機能が充実しており、結果的に安定運用につながるケースが多くあります。
Q3. OSS(オープンソース)と無料ツールは同じですか?
OSSはソースコードが公開されており、利用者が自由にカスタマイズできるソフトウェアを指します。一方、無料ツール(フリーソフト)は必ずしもソースコードが公開されているわけではなく、「無償で使える」という点に主眼が置かれています。目的に応じて選ぶことが大切です。
まとめ
フリーのネットワーク監視ツールは、初期費用を抑えてネットワーク監視をはじめられる便利な選択肢です。ただし、監視対象数や機能、サポート面には制限があるため、自社の規模や求める運用レベルにあうか慎重に見極める必要があります。
もし長期的な安定運用や迅速なトラブル対応を重視する場合は、有償版の導入をぜひ検討してみてください。下のボタンから比較資料を取り寄せ、自社に最適なネットワーク監視ツール選びに役立てましょう。