
有給休暇申請を電子化すべき理由
2019年に施行された働き方改革関連法により、労働基準法も改正され、企業には条件を満たす従業員に有給休暇を付与することが義務化されました。具体的には、年10日以上の有給休暇の権利をもつすべての労働者に対して、年5日以上の取得が必要とされています。
この改正を受けて、有給休暇の取得率が上昇し、社内での申請・承認業務の機会も増えています。従来の紙による申請では、印刷や押印の手間がかかるうえ、社内にいなければ処理が進まず、承認までに時間を要することもしばしばあります。
こうした課題を解決する手段として有効なのが、有給休暇申請の電子化です。申請から承認までのワークフローを効率化し、業務負担の軽減につながります。
以下の記事では、有給休暇義務化の概要や違反した場合の罰則などをわかりやすく解説しています。あわせて参考にしてください。
有給休暇申請の電子化における法的要件・注意点
有給休暇申請を電子化する際には、法的な要件を事前に確認しておくことが重要です。労働基準法第109条では、労働関係の書類について3年間の保存義務が定められており、e-文書法により電子保存も認められています。
ただし、保存を行うには見読性・検索性・改ざん防止といった要件を満たす必要があります。これらの要件を確実にクリアにするためには、ワークフローシステムや勤怠管理システムなど、専用の業務システムを導入するのが現実的です。
システムを活用すれば、申請書を一元管理できるため、情報の検索性が高まり、申請・承認の履歴もログとして残せます。これにより、内部統制やセキュリティ対策の面でも安心して運用できます。
参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
参考:労働基準法|e-Gov 法令検索
なお、有給休暇付与の条件や対象者については、以下の記事でも詳しく解説しています。
有給休暇申請を電子化する2つの方法
有給休暇申請の電子化には、大きく分けて「勤怠管理システム」と「ワークフローシステム」の2つの方法があります。どちらのシステムもクラウド化が進んでおり、スマートフォンからの申請・承認にも対応可能です。自社の運用状況や目的に合わせて、最適な手法を選びましょう。
勤怠管理システムの活用
勤怠管理システムでは、出退勤や残業、有給残日数の管理に加えて、有給申請や承認も行えます。すでに導入している企業であれば、追加費用なしで運用できる場合も。有給の自動付与や取得状況のアラート機能など、法令対応を支援する機能も充実しており、日常的な勤怠管理とあわせて効率化を図れます。
以下の記事では、勤怠管理システムのおすすめ製品を比較できます。製品導入を検討中の方は参考にしてください。
ワークフローシステムの活用
ワークフローシステムは、社内申請全般を電子化するツールで、有給休暇申請もその一部として効率化可能です。申請内容ごとに承認ルートを自動で振り分けられるため、決裁の進捗を可視化し、ボトルネックを解消できます。既存の勤怠管理システムと連携可能な製品もあり、申請から取得管理まで一元化できる点も大きなメリットです。
ワークフローシステムの導入がまだの方は、まずは以下の記事でおすすめ製品を比較してみてください。
有給休暇申請を電子化するメリット
有給休暇申請を電子化することで、業務の効率化だけでなく、法令遵守や従業員満足度の向上にもつながります。ここでは、特に注目すべき2つのメリットを詳しく解説します。
業務の遅延を防ぎ、申請・承認をスピーディに進められる
紙の申請書では、申請用紙の印刷や記入、上司への提出といった複数の手順を踏む必要があり、ちょっとした遅れが業務全体の滞りにつながります。特に本社と支社間のやりとりでは、郵送や持ち回りの手間が発生しやすく、承認までに数日を要することも珍しくありません。
勤怠管理システムやワークフローシステムを活用すれば、申請から承認までをオンラインで完結できます。勤怠管理システムでは、有給残日数の確認から申請、承認までをシステム上で一括して進められ、アラート機能によって承認の遅れも防げます。
ワークフローシステムではさらに、承認ルートの自動化や他の申請業務との統合も可能となり、全社的な決裁スピードの底上げが期待できます。どちらのシステムもスマートフォン対応の製品が多く、外出先からでも手続きが進められる点も大きなメリットです。
進捗をリアルタイムで可視化し、対応漏れを防止できる
紙の申請では「今、誰が承認を止めているのか」が見えにくく、申請者も対応者も進捗を把握しづらいという課題があります。これに対し、システムによる電子化では申請フローの可視化が進み、手続きの停滞をすぐに把握できるようになります。
勤怠管理システムでも承認の進捗が画面上に表示され、上長に承認を促す通知が自動で送られる仕組みを備えているものが一般的です。ワークフローシステムの場合は、ステータスの履歴管理や承認ルートの柔軟な設定など、内部統制や監査対応にも役立つ機能が充実しています。
申請業務の属人化を防ぎ、透明性と確実性を担保するためにも、こうした可視化の仕組みは有効です。
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有給休暇申請の電子化で気をつけたいデメリット・課題
有給休暇申請の電子化には多くのメリットがありますが、いくつか注意すべき点もあります。例えば、システム導入にかかる初期費用や、従業員ごとのITリテラシーの差によって習熟度にバラつきが出る可能性があります。
さらに、承認ルートの設定を誤ると運用上のトラブルにつながることもあるため、導入時には十分なテストと運用設計が欠かせません。こうした課題を踏まえ、導入後のサポート体制が充実した製品を選ぶことが重要です。
有給休暇申請の電子化に関するよくある質問(FAQ)
有給休暇申請の電子化にあたって、よく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。自社に適したシステムを選ぶための判断材料としてもご活用ください。
- ■Q1:有給休暇申請の電子化は法的に問題ありませんか?
- はい、電子化は法的に認められています。労働基準法では、有給休暇に関する書類の保存義務が定められており、e-文書法に基づけば電子保存も可能です。ただし、見読性・検索性・改ざん防止といった要件を満たす必要があるため、要件に対応したシステムの利用が推奨されます。
- ■Q2:中小企業でも導入できますか?
- はい、近年はクラウド型で初期費用を抑えられる勤怠管理システムやワークフローシステムが増えており、少人数からのスモールスタートにも対応しています。 スマートフォン対応やシンプルな画面設計の製品も多く、ITに不慣れな現場でも運用しやすい点が魅力です。
- ■Q3:勤怠管理システムとワークフローシステムはどちらを選べばよいですか?
- 有給休暇の申請・承認だけを電子化したい場合は、勤怠管理システムの活用で十分なケースが多く、導入・運用のハードルも低めです。一方、稟議・経費精算・購買申請など、ほかの業務申請もあわせて電子化したい場合は、ワークフローシステムが最適です。将来的な拡張性を見越して、ワークフローシステムと勤怠管理システムを連携させる企業も増えています。
システム選定のポイントとチェックリスト
有給休暇申請を電子化する際は、自社の業務や体制にあったシステムを選ぶことが重要です。以下のチェックポイントを参考に、最適なツールを見極めましょう。
- ■法令対応機能(e-文書法対応、保存ログ)
- 有給休暇申請データの電子保存には、労働基準法第109条やe-文書法への対応が必要です。システム側で保存期間の自動管理、改ざん防止ログ、監査証跡の出力に対応しているかを確認しましょう。
- ■スマートフォン・タブレット対応
- 外出先や在宅勤務中でも申請・承認を進められるよう、モバイル端末での操作性やレスポンシブ対応は欠かせません。特にフロントラインの従業員が多い職場では、PC非依存の環境整備が業務定着の鍵となります。
- ■他システムとの連携(勤怠/人事)
- 勤怠管理システムや人事管理システムとの連携により、有給残日数の自動反映や社員情報の一元管理が可能になります。手作業による二重管理や入力ミスを防ぐためにも、API連携の可否や対応範囲を確認しましょう。
- ■カスタマイズ性(承認ルート・申請書式)
- 組織や部署によって承認ルートや申請項目が異なる場合は、柔軟に設定を変更できるシステムが望まれます。分岐承認・条件分岐・承認者の自動判定などの機能を備えているかを確認しましょう。
- ■サポート体制と導入実績
- 導入後の運用支援やトラブル対応も重視すべきポイントです。導入実績が豊富で、業種別のサポートノウハウを持つベンダーは安心感があります。オンボーディング支援やユーザー教育の有無もあわせて確認しましょう。
上記の観点をもとに製品を比較することで、自社の業務や運用にあったシステムが見つけやすくなります。下記から各社ワークフロー製品の資料をまとめて請求できるので、ぜひご活用ください。

まとめ
有給休暇申請の電子化は、業務効率化・法令対応・従業員満足の向上に直結します。特に、ワークフローシステムは幅広い社内業務の効率化にも役立つため、有給申請を機に導入を検討する価値があります。まずは、自社にあった製品の比較からはじめてみてはいかがでしょうか。