データマートとは
データマート(Data Mart)とは、企業に蓄積された膨大なデータから、目的に応じて必要な情報のみを取り出した小規模なデータベースのことです。例えば、マーケティング部門がメールキャンペーンを行う際に「会員番号」「メールアドレス」のみを抽出し、データマートとして利用するケースが典型です。
- ■使い方の例
- ・部門単位で必要なデータをすぐに取り出してレポート作成
- ・営業のリード管理や販売予測に特化した分析基盤
- ・既存システムとの連携によるレポーティング自動化

データマートの構造とポイント
データマートを構築する際は、目的や利用部門を明確にすることが最優先です。ETL(Extract, Transform, Load)ツールを活用して、元データを抽出・加工・ロードし、必要最小限のデータマートを作ります。
ポイントは以下のとおりです。
- ●目的を明確にする:どの分析やレポートに使うのかを決める
- ●データの品質を担保する:不要なデータを混入させず、一貫性を保つ
- ●将来的な統合に備える:後からDWHやデータレイクに統合しやすい設計にする
データマートのメリット
データマートを活用する主なメリットは、以下のとおりです。
- ■短期間で構築可能
- データマートは必要なデータ範囲が限定されているため、データウェアハウスに比べて構築期間が短く、数週間から数か月で稼働開始できるケースも多くあります。
- ■コスト効率が高い
- 特定の部門や分析テーマに特化してデータを格納するため、必要なストレージや処理能力も小さく抑えられ、初期投資や維持費を大幅に節約できます。
- ■意思決定のスピード向上
- 部門単位で欲しいデータだけを迅速に抽出・分析できるため、レポート作成や改善施策の実行スピードが向上します。
- ■将来的なデータ統合・高度分析への足がかり
- まずは小規模なデータマートでスモールスタートし、分析文化を社内に根付かせることができます。そのうえで、将来的にデータウェアハウスやデータレイクと統合し、全社レベルでAIやBIツールを活用する基盤へ発展させやすいのも特徴です。
このように、データマートはコストや構築時間を抑えながら、部門単位のスピーディな意思決定を支える効率的な選択肢です。さらに全社的なデータ活用に移行する際の基盤としても機能するため、中小規模のプロジェクトや限られた予算のなかでも大きな投資対効果が期待できます。
データマートの導入事例と課題
データマートは以下のような課題を抱える企業でよく導入されています。
- ■導入事例
- ・小売業:POSデータから売れ筋商品を分析するためのデータマートを構築
- ・SaaS企業:カスタマーサクセス部門向けに解約傾向を把握する専用マートを作成
- ・金融業:営業部門ごとの成績管理に特化したデータマート
こうした事例のようにデータマートは多様な業種・目的で導入されていますが、一方で以下のような課題が見られるケースも少なくありません。
- ■よくある課題
- ・部門ごとにバラバラにデータマートを構築し、後に統合時に整合性の問題が発生する
- ・初期コストを抑えすぎた結果、将来のデータ量増加に対応できない設計になってしまう
- ・データ更新プロセスが属人的で、担当変更で運用が滞る
こうした課題を避けるために、全社データを統合管理できるDWHを検討する企業も増えています。下記より資料をまとめて請求し、最適な選択肢を探してみてください。
データマートの3つのタイプ
データマートには、「従属型」「独立型」「ハイブリッド型」の3タイプがあります。それぞれの特徴を解説します。
従属型データマート
従属型データマートは、データウェアハウスを基盤として構築されるデータマートです。データウェアハウス内の統合データを抽出し、部門や業務ニーズに応じて加工・整理したうえで利用されます。
データの一貫性が保たれるため、全社的なデータガバナンスを維持しつつ、個別の分析要求にも対応可能。データソースを統一することで、重複や不整合を防ぎます。ただし、データウェアハウスが必須のため、構築コストが高くなりがちです。
独立型データマート
独立型データマートは、データウェアハウスを使用せず、部門や特定業務に限定したデータ基盤です。個別のソースシステムから直接データを抽出して運用され、構築が迅速でコストも比較的低いのが特徴です。小規模な組織や初期段階のプロジェクトに適しています。
ただし、全社的なデータ統合がされていないため、異なる部門間でのデータ整合性や一貫性に課題が生じる可能性があります。
ハイブリッド型データマート
ハイブリッド型データマートは、従属型と独立型の特徴をあわせもつタイプです。必要に応じて、データウェアハウスと外部ソースの両方からデータを収集します。全社的なデータ活用を目指しつつ、特定のニーズにも素早く応えられるのが特徴です。
一方で、管理が複雑になる場合があり、設計時にデータの統合戦略を明確にする必要があります。
データマート・データウェアハウス(DWH)・データレイクの違い
データマートと同様に、データの蓄積・分析に用いられるシステムとして、データウェアハウス(DWH)やデータレイク(Data Lake)があります。以下の表では、3者の特徴や違いを項目ごとに比較しています。
データマート | データウェアハウス | データレイク | |
---|---|---|---|
特徴 | 分析対象が狭い 短時間で構築が可能 | 全社横断の分析 高いデータ整合性 | 非構造化含む全データを |
データ | 二次加工済み | 一次加工済み | 未加工 |
構築コスト | 低い | 高い | 中程度(保存コストは低) |
活用例 | 部門別レポート | 全社BI | AI/機械学習 |
データウェアハウス(DWH)は、組織全体のデータを一元管理し、各部門を横断した高度な分析や予測、可視化を行う基盤です。データの整合性や信頼性が高く、全社的な意思決定を支えます。
一方、データマートは部門ごとの特定目的に特化した小規模なデータ基盤で、手軽に構築できコストも抑えられます。データレイクはあらゆる形式のデータを未加工のまま保存可能で、将来の機械学習や高度分析に柔軟に対応できます。
こうした選択肢の違いや特徴を理解し、自社に適したデータ活用基盤を選ぶことが重要です。データウェアハウスやデータレイクについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
データ活用基盤の最適な選択肢とは
近年はDWHやデータレイクで全社データを一元管理し、部門ごとにはデータマートを設置するハイブリッド型が主流です。
ただし、いきなりDWHを構築するのはハードルが高いため、まずはデータマートを整備し、将来的に統合基盤に移行する段階的な戦略がおすすめです。これならデータの一元化や運用効率の向上もスムーズに進められます。
そのうえで、以下のような課題がある企業は、全社レベルでのデータ統合を見据え、データウェアハウスの導入を検討する価値があります。
- ●営業・マーケット部門で異なる数字を使っており、データを統一したい
- ●レポート作成に時間がかかり、全社レベルでの迅速な意思決定が難しい
- ●将来AI・BI分析に備えた全社的なデータ基盤を整備したい
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システム導入前に確認すべき3つのポイント
データマートやデータウェアハウス、データレイクを導入する前に、次の3つを確認しましょう。
- ■利用目的の明確化
- 部門ごとの迅速な分析にはデータマート、全社的なデータ統合にはデータウェアハウス、幅広いデータ活用にはデータレイクが適しています。目的が曖昧なままでは、システムの設計や運用が非効率になりがちです。まずは何のために導入するのかを明確にしましょう。
- ■予算の策定・確保
- データマートは比較的低コストですが、データウェアハウスやデータレイクは規模が大きく、運用費もかかります。費用対効果を見極め、長期的な投資計画を立てることが大切です。
- ■製品の比較・検討
- クラウド型かオンプレミス型か、ベンダーのサポート体制、既存システムとの連携など、選ぶポイントはさまざまです。自社の要件にあった製品を選ぶことが成功のカギです。
システム選びに迷ったら、以下の記事も参考にしてください。データウェアハウスのおすすめ製品や選び方を詳しく解説しています。
まとめ
データマートは、データウェアハウスから必要な情報のみを取り出し、部門や業務に特化した迅速な分析を目的としたデータベースです。データウェアハウスは組織全体のデータを統合し、横断的な分析を可能にする基盤です。ビッグデータ活用による新たな価値創出にもつながります。データレイクは、あらゆる形式のデータをそのまま蓄積し、機械学習や高度分析に柔軟に対応できるのが特徴です。
まずは部門単位でデータマートを活用し、将来的にデータウェアハウスやデータレイクと連携して全社的な最適化を目指す戦略も有効です。データマートとデータウェアハウス、そしてデータレイクの特徴を理解し、自社にとって最適なシステムを選びましょう。
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